第6章

娘のそばを漂う私。彼女を抱きしめたくてたまらない。娘は必死で真実を伝えようとしているのに、彼らはまるで台本のセリフを読んでいるかのように彼女を扱う。

文人はパンチングバッグに歩み寄る。映像制作者としての勘が働いたのだ。小道具を扱ってきた経験から、何かがおかしいと分かった。

「これ、変だぞ」彼は革に手を押し当てて言う。「あるべき重さよりずっと重い」

雅人も加わる。「ああ、形もおかしい。ぐにゃぐにゃした感じだ」

恵理奈はまだ小百合を慰めようとしているが、背筋に冷たいものが這い上がってくるのを感じていた。「文人さん、やめた方が……」

「お父さん、ただのトレーニング用具でしょ」美咲が割って...

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